研究室のメンバーにハイキングに行かないかと誘われ、7月1日Makiling山に登った。大学の裏山にハイキングに行くと聞いていたので高尾山みたいな山かと思っていたら標高1090mの本格的な登山が待っていた。私自身熱帯雨林の山に登るのは初めてだったが、装備品などについて日本とは異なる点がいくつかあったので紹介する。
ヤマビル対策は徹底しよう!
フィリピンでの登山装備は日本と少し異なる。日本でも登山するときは虫や蛇対策のために出来るだけ肌を隠すように言われるがフィリピンではより顕著であった。これは、limaticと呼ばれるヤマビルと紫外線対策のためだ。上から帽子、顔を覆うバンダナ、スカーフ、半袖シャツ、アームカバー、軍手、レギンス、厚手の靴下、登山用サンダルという隙のない装備だった。普通の長袖シャツやジーンズではダメなのかと聞いたところ隙間からlimaticが入ってくるから、伸縮性のあるアームカバーやレギンスの方が良いということだった。実際自分はレギンスを持っていなかったので長ズボンで参加したが、4箇所ヤマビルに刺されていた(フィリピンメンバーは被害なし)。それにしてもフィリピンメンバーのヤマビル対策は徹底したもので、この装備の上からメンソールやハッカ油を塗っていた。メンソールやハッカ油の匂いはヤマビルを寄せ付けない効果があるのだとか。どうしてそこまで対策するのかと聞いたところ、フィリピンのヤマビルは病気の危険性は低いが小さく刺されても気づきにくいため、知らない間に目や耳に入り込んでいたということがあるかららしい。確かに自分も4箇所ヤマビルに刺されたことを風呂場で流血する足を見るまで気づかなかった。しかし、気温も高い中こうした装備で登山するのはかなりしんどい。フィリピンメンバーも頂上に近づいた頃には顔を覆うバンダナなどを脱いだり腕をまくったりしていた。その代わりにお互いに顔を見せ合いヤマビルがついてないかの確認は頻繁に行なっていた。万が一自分の肌にヤマビルがついていたときには慌てずにアルコールスプレーを吹きかけると簡単に取れる。ヤマビルは吸着力が強いため無理やり取ろうとすると口の部分だけ残ったまま千切れてしまうのでアルコールで取ることをおすすめする。
実際歩いてわかる熱帯雨林の魅力
今までの人生で本格的な熱帯雨林というのは、テレビでしか見たことがなかったのでワクワクしていた。Makiling山は遭難防止のため入山する場合は、参加者5人につき1人のガイドさんをつけることが義務付けられており初心者でも安心して登山することができる(入山1週間前までにサイトでの登録が必要)。ガイドさんは頼めば英語でガイドしてくれるが、説明が???ということも多かった。しかし、Makiling山の歴史や樹木、野生動物など様々なテーマについて解説してくださり道中飽きることがなかった。私の趣味はバードウォッチングだとガイドさんに伝えるとこの山は手軽に珍しい鳥が見れる場所として多くのバードウォッチャーが訪れると教えてくれた。実際に森に入ると、林冠からはサイチョウ類の鳴き声が林床からはおそらくタイヨウチョウなどの鳴き声が聞こえてきた(姿は見えなかったが‥)。また、フィリピン大学のロスバニョス校では、学部生のスポーツの授業の選択肢にMakiling山でのバードウォッチングがあるらしい。履修者は鳥の鳴き声を覚えて何を観察できたかレポートを書くのだとか。もちろん、Makiling山の見どころは鳥だけではない。この山にはラフレシアの群生地があった。開花期は3月後半から5月となっており、この時期は観光客で賑わうようだ。7月だったのでもちろん咲いておらず、蕾しか見ることができなかった。観光客のラッシュを避けたいならシーズンのはじめに来ると良いとガイドさんが教えてくれた。来年リベンジしたい。登山道は険しく気温も高いため想像よりキツかったが、今挙げた以外にもコノハムシや野性のランブータンなど熱帯雨林らしいものをたくさん観察できた。実際に踏み締める熱帯雨林はテレビで見るのに比べて、樹木の迫力や鳥の鳴き声の美しさ、昆虫の鮮やかさなどが桁違いである。なかなか観光客が手軽に熱帯雨林散策できる場所というのも限られていると思うので、フィリピンに来た際は是非Makiling山に登ってみることをお勧めする。費用は入山料とガイド料合わせてP350(900円くらい)だった。
登山マナーとMakiling山の民間伝承
日本でも山が神話と関係し祀られている例はたくさんあるが、Makiling山ではMariang Makilingという神様が信仰されていた。Mariang Makiling はフィリピン神話に出てくる神様の一人であり、美しい女性の姿をしているらしい。Makiling山はMariang Makilingが寝ている姿だと言われており、上の写真で山頂の窪みから右側が顔、左側が手を組んで仰向けに寝ている姿だとされている。山に入る際はいくつか掟が存在し、山に生えている果物を持って帰ろうとしたり騒ぎながら登るとMariang Makilingの怒りに触れ帰れなくなると言われている。そのため登山道中には、日本では見ないようなユニークな植物が目白押しだが無闇に採取したり持ち帰るのはお勧めしない。Mariang Makilingは地元の人から強く信仰されており、Makiling山に舗装された登山道を作るプロジェクトが立ち上がったときは、Mariang Makilingの怒りに触れるからという理由で工事が中断された。幸運なことに私たち一向は、Mariang Makilingの怒りに触れず無事登頂することができた。登頂まで4時間ほどだったが、日頃の運動不足からか私は満身創痍だった。一方でフィリピンメンバーの1人はビーチサンダルで登っていたのにも関わらずピンピンしていた。最後に1つフィリピンで登山する際のアドバイスだが、日本よりも水をたくさん持って行ったほうが良い。私は、行きだけで持って行った水を2リットル飲み干し帰りは他の人のやつを分けてもらった。日本よりも暑く水の消費が早いため日本で消費する量より少し多めに持っていくことをお勧めする。
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