皆さん、家にネズミが出た経験はあるだろうか。今の時代、家にゴキブリがいて困るという話は聞いても、ネズミで困っているという話はなかなか聞かないんじゃないか。私自身フィリピンに来るまで、家にネズミが出たことは1回もなくトムとジェリーのような世界はファンタジーなんだと思っていた。そのためあまりネズミの危険性について知らず、フィリピンの家でネズミを目撃しても初めのうちは放っておいていた。しかし、生活するうちにその危険性がわかってきたので紹介する。フィリピンに限らず海外の家でネズミが出たときはすぐに対策することをお勧めする。
ネズミウイルスの怖さ
去年の10月、3件隣の家のおばさんが50代半ばで亡くなった。フィリピンの女性の平均寿命は約70歳であり(WHO, 2023)比較的早死にということになる。ご近所ということもあってか日頃からフレンドリーに接してくださり、彼女の誕生日パーティーにも参加したことがあったためショッキングなニュースだった。詳しい話を聞くと死因はネズミウイルスで、気づかないうちに感染し発症した1日後に集中治療室で亡くなったらしい。ここで私は初めてネズミの恐ろしさを知り、家に大量にネズミがいる現状のヤバさを悟った。ここら辺の地域ではよくあることなのかと聞くと、滅多にない、少なくともここの農村(Barangay)では初めてだと言われたが、流石に家のネズミ対策を強化することにした。
ネズミの運動性能の高さを舐めてはいけない
早速、ホームセンターのようなところに行きネズミ捕りを探した。トムとジェリーに出てくるようなバネ式のネズミ捕りがあるといいな、その場合餌は本当にチーズでいいのかなど考えながら売り場を彷徨っているとネズミ捕り売り場に到着した。やはり他の家でも被害は多いようでゴキブリ捕りや殺虫剤よりも売り場が大きかった。残念ながらバネ式のネズミ捕りは売っておらず、ほとんどが粘着テープ式のものだった。粘着テープ式とは、マットに強力な粘着シートが塗布されていて上を通過したネズミを捕獲するもので、簡単に言えばゴキブリホイホイの強化版である。とりあえず2つ購入し帰宅した。1つ目は引っ越した当初からネズミをよく目撃していたキッチンに設置し、2つ目は念のため寝室のベッドの下に設置した。私はこの時点で、寝室にはネズミがいるわけないと慢心していた。寝室には研究で用いるイネのサンプル試料を保管していたが、イネのサンプルは大学でもよくネズミの被害に遭うため、ネズミが寝室に入ってこないように扉は基本的に閉めておくなどの配慮をしていたからだ。しかし現実はそう甘くはなかった。トラップを設置した3日後、私はベッドの下から聞こえるガタガタという謎の音で目を覚ました。音の正体を確認するために起きあがろうとしたその瞬間、隣の棚から顔面に目掛けて小動物が落ちてきた。暗くて姿は見えなかったが、ヤモリより重くフサフサしていたため確実にネズミである。間違いなく人生で最悪の目覚めだった。半ばパニックだったがとりあえず電気をつけ、ベッドの下を確認した。音の正体は罠にかかったネズミだった。私の顔に着地したネズミはとんでもない跳躍力でベッドから窓にジャンプし外に逃げていった。窓は網戸が張ってあるため外からは入ってこれないはずだったが、確認すると見事に食いちぎられていた。もちろん研究用のイネのサンプルも少し食われていたが、それよりもネズミ2匹と一緒に寝ていたことの方が衝撃だった。下手したら死んでいたかもしれない。その日から私はどんなに暑くても窓を閉め切って寝ている。
ネズミはなんでも食べる
寝室にいるネズミは閉め切り作戦でなんとか対策できたものの、キッチンにいるネズミはなかなか根絶できないでいる。こちらは実害はあまりないが食器に糞がついていたりするため厄介である。ネズミトラップの他に塩素系漂白剤に浸した米などをキッチンに撒いてみたが、毎晩完食してくる割に数が減ってる感触がなく効果は薄いように思われる。最近は風呂場の固形石鹸も食べており、石鹸に歯形がついていて気色が悪い。近隣住民が言うように猫を導入するしかないのだろうか。話は変わるが、興味深いことに私が住んでいる地域ではネズミを食べる文化がある。家にいるネズミではなく田んぼなどにいるやつだ。実際調査中に何回か狩りの場面に遭遇しており、市場でもたまにネズミ肉が売っているのを見かけたことがある。住民によるとかなり美味しいらしい。そのうちネズミ肉についてもレビューしようと思うのでお楽しみに!

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