フィリピンと日本の誕生日パーティーの決定的な違い

生活
今回の誕生日パーティーは撮り忘れたので、別の日の誕生日パーティーの様子

 先日私の誕生日があり、家の近くに住んでいる人たちを集めてささやかな誕生日パーティーを開いた。パーティー自体は盛り上がり楽しかったが、開催にあたり自分の認識とフィリピン人の認識が大きく異なることがあったので共有しておく。フィリピンで誕生日パーティーを開く時や日本でフィリピン人の友達の誕生日パーティーを企画するときに役立つだろう。

ホストは誰か?

 結論から言えば、フィリピンと日本の誕生日パーティの違いはホストが誰かという点である。日本では、例えばA君の誕生日パーティの開催を決定するのはA君の家族や友達であることが多いと思う。そして誕生日パーティーをする場合、準備をするのはA君の家族や友達でA君はもてなされる側である。そのため誕生日パーティの中には本人にはサプライズで開催されるものも存在する。しかし、フィリピンではこれが全く反対なのだ。誕生日パーティーの開催を決めるのは誕生日を迎えた本人のA君であり(年齢が小さい頃は親が決める)、A君が中心となって料理やケーキの準備、家の装飾などを行う。A君の家族や親戚、友達は誕生日を一緒に祝ってくれるお客さんとしてもてなされる。この認識の違いが今回のいざこざの原因である。

誕生日のいざこざ

 誕生日の日が近づいてくると、近所に住んでいる人から誕生日はお祝いしないのかと聞かれるようになった。「お祝いしてくれるのか?」と聞くともちろんだと言っていたため、僕はてっきり近所の住民が僕の誕生日パーティーをやってくれるのかと思っていた。しかしこれはお前がパーティーを主催すればもちろん行ってやるという意味である。普通に考えて2ヶ月前に突然来た外国人のために誕生日パーティーを開催してくれるなんて話があるわけないのだが、私が住んでいる地域では2週間に1回くらいのペースでどこかの家で誕生日パーティーが行われており私も毎回招待されていたため、よっぽど誕生日パーティーをするのが好きな人たちなんだな思って勘違いしていた。
 誕生日当日になって誰かが会場の連絡をしてくれるのを待っていたが、誰からも連絡が来ない。これは口約束だけで終わるパターンかと思って家でのんびりしていると、午後8時を過ぎたくらいに突然近所の人が家にやってきた。「今日は結局パーティーをしないのか?」と聞かれ、それはこっちのセリフなんだがと思いつつ「家には何にもないよ」と答えると、「何で何の準備もしていないんだ」と言われた。このとき、自分がパーティーを主催しなければならなかったことに気づいた。とりあえずその場は「今日は調査で疲れていたんだ」と言い訳をして次の日に延期することにした。次の日よく雇っているバイクタクシーの運転手に相談してみると、ビールとスナックを準備すれば十分だということだった。そこで瓶ビールを1ケースと適当なスナックを5袋ぐらい準備しておくと、お客さんたちがやってきた。正直いつも招待されている誕生日パーティーに比べると用意しているものも大したことがなく量も少なかったため心配だったがみんな満足してそうでよかった。
 フィリピンで生活する中で、誕生日パーティーによく誘われるけれど参加費を払わなくていいのだろうかというのは大きな疑問の1つだった。しかし今回の件で疑問は解消された。フィリピンでは、誕生日パーティーに来る人は誰であろうともてなされる側なのだ。誕生日パーティーの会場で道端で物乞いしている人をよく見かける理由もわかった。これまではたまたま主催者の親戚なのだろうと思っていたが、おそらく彼らも私と同じように近くに住んでいるからという理由だけで呼ばれているのだろう。これまで東京、仙台と大都市に住んできたせいか「地域の結びつき」を実感する機会はなかったし、「地域の結びつき」に対して田舎のめんどくさい人間関係というイメージを持っていた。しかし現状私が、フィリピンのど田舎で警察もいない中、比較的安全に楽しく暮らせているのは誕生日パーティーのような「地域の結びつき」のおかげである。引き続き安全で楽しい調査生活を続けていくためにも、今回誕生日パーティーを主催したことが少しでも「地域の結びつき」へ貢献していることを願いたい。
 

コメント

  1. もっこ より:

    記事を非常に興味深く拝見させて頂きました
    現代日本では希薄になってしまったこのような地域の強固な固着は、僕の目には非常に新鮮かつノスタルジックに映り、また納得させられる部分もありました。

    日本のような警察による治安維持よりも非常に効果的で、今現在日本で問題視されている孤独死などもほぼ皆無にできるとても効率的なシステムに思えます。

    このような地域の密着性はもちろん問題もあるでしょうが、私にはメリットの方が多いように思えました。
    とても面白いトピックでしたので次の記事も期待してお待ちしております。
    どうかご自身のお仕事に支障をきたさない程度に、ゆるやかに長く続けて頂けると幸いです。
    これからも楽しみにしています。

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